SCREENING検査について

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01 BACKGROUND

学校での側弯症検診は義務化されています

側弯症の初期は自覚症状に乏しいため、気づいた頃には手術が必要なほど重度に進行しているケースも珍しくありません。そのため、検診などにより第三者が見つけることが重要であり、日本では1979年から学校保健法(現在の学校保健安全法)で側弯症検診が義務付けられました。また、2016年からは小学生から高校生までの全学年で毎年学校での運動器検診が始まり、これには側弯症のチェックも含まれています。

側弯症の発見率に地域格差が生じています国内の13-14歳の女児における側弯症の有病率は 2.51%であると報告されています(1)。しかしながら、文部科学省が発表する学校保健統計調査から、側弯症に関わる「せき柱あるいは胸郭に異常」について、各都道府県の14歳女児の異常が認められた割合は平均で0.9%であり、側弯症の有病率に、学校健診での発見率が達していないことが分かります。また各都道府での発見率は0.2-3.0%と地域格差があることが伺えます。

せき柱あるいは胸郭に異常が認められた割合
引用:文部科学省 学校保健統計調査/2007年- 2015年/14歳女児より作図
02 UNMET NEEDS

側弯症検診の課題

側弯症の初期は自覚症状に乏しいため、気づいた頃には手術が必要なほど重度に進行しているケースも珍しくありません。そのため、第三者が見つけることが重要であり、日本では1979年から学校保健安全法で小中学校での側弯症検診が毎年義務付けられています。

側弯症検診において地域格差が発生している原因としては、学校健診の方法や技術的基準を規定している学校保健安全法施行規則において、側弯症の具体的な検査方法や基準などについての記載がなく、その結果、各自治体によって側弯症検診の方法が異なることが考えられます。側弯症の検診方法として家庭でも実施可能な前屈検査が広く普及していますが、学校健診での実施にはいくつかの課題があります。
※前屈検査とは、前屈した状態で背部の隆起を確認する検査です。「ゆっくり前屈させながら、背中の肋骨の高さに左右差(肋骨隆起、リブハンプ)があるかどうか、腰椎部の高さに左右差(腰椎隆起、ランバーハンプ)があるかどうか確認する。」(児童生徒等の健康診断マニュアルより引用)

側弯症検診におけるチェックポイント

① 検査精度1998年Spineにおいて、側弯症の前屈検査の診断結果が検者によってばらつきがあることが報告されました(4)。特に腰椎カーブに対しては、側弯症の見逃し(偽陰性率)が27%発生していました。

前屈検査の精度

引用:Côté, P. et al. Spine. 1998 , vol.23, p 796- 802より作図

② 記録方法近年、学校での側弯症検診で側弯症が見逃されたとの訴訟が起こっていますが、前屈検査では画像等の客観的な記録を残すことが難しいという課題があります。

③ 検診時間の制約とプライバシーへの配慮 学校での検診には時間の制約があるため、既存の学校医の数では実施が難しく新たな医師を確保する必要があります。また、検診をする医師の性別は選べず、思春期の子どもに対する上半身裸での検査に、医師および子ども、保護者が抵抗感を持つ場合があり、学校側が前屈検査の導入に躊躇してしまうケースも発生しています。

03 CHALLENGE

検査機器を用いた側弯症検診

前屈検査では客観的な診断が難しいこと、また側弯症検診の確定診断に用いられるX線では被ばくの問題があることから、1980年代頃から側弯症検診向けにモアレ法という検査方法が開発され、導入されてきました。モアレ法は物体表面の3次元情報を、平面上に等高線パターンとして図化したもので、モアレ縞と呼ばれる縞模様の左右差から側弯症を疑う方法です。モアレ法ではX線を使わないため被ばくすることなく背面の高低を定量的に計測でき、さらに短時間で実施可能で子どもの負担が小さいことから、海外でも側弯症検診に用いられています。 米国での2018年Theofilos K. らの報告によると、モアレ法における側弯症の感度は100%であり(5)、写真データとして記録が残せ、客観的な評価が可能です。また、撮影は医師でなくでも対応でき、生徒・児童のプライバシーに配慮した形での撮影も可能です。これらのことから、モアレ法を検診に用いることで側弯症発見率の地域格差が是正されると期待されます。

モアレ法を用いた側弯症検査の全国普及に向けて

モアレ法あるいは類似した検査機器を用いて側弯症検診を実施している地域は、いまだ日本の一部です。千葉県や愛媛県、秋田県では県内の大部分の市町村がモアレ法を用いた検査を実施しています。大阪府は2008年の訴訟をきっかけに府内市町村での導入が拡大しています。その他、東京都、埼玉県、岩手県、静岡県、兵庫県などにおいて検査機器を用いた側弯症検診が行われています。 側弯症学校検診の方法については、各市町村にゆだねられており、全国各地での検査機器を用いた側弯症検診の普及には、各自治体において、行政、教育関係者、学校医、保護者の理解と協力が必要です。

側弯症検診実態(2021年弊社調べ)

学校側弯症検診の現場で求められた医療機器の開発

一部地域で普及していたモアレ法ですが、モアレカメラが約10年前に製造中止・サポート終了となったことで、医療機器を用いた側弯症検診を今後辞めざるを得ない地域がでてくるとの懸念から、側弯症専門医および検診現場からモアレカメラに変わる機器の開発が望まれ、近年他の側弯症検査機器が開発されてきています。

    • 監修:
    • 松本 守雄
    • 所属:
    • 慶應義塾大学 整形外科学教室教授

    学校での側弯症検診で側弯症の指摘を受けず、気づかぬまま側弯症が重症化し、病院に来る児童がいます。見逃しがないよう医療機器を用いての検診が望まれます。

  • 引用:
  • (1) Masaki U.; Masashi T.; Toshiyuki N. et al. A 5-year epidemiological study on the prevalence rate of idiopathic scoliosis in Tokyo: school screening of more than 250,000 children. J Orthop Sci. 2011, vol.16, p. 1- 6
  • (2) Stuart, L. W.; Lori, A. D.; James G. W. et al., Effects of Bracing in Adolescents with Idiopathic Scoliosis. N. Engl. J. Med. 2013, vol. 369 (16) , p. 1512- 1521
  • (3) 黒木 浩史, 田島 直也. 側弯症学校検診の世界的動向に関する文献的考察. J. Spine Res. 2020, vol. 11, p. 1260- 1264
  • (4) Côté, P.; Kreitz, B. G.; Martel, J. et al. A Study of the Diagnostic Accuracy and Reliability of the Scoliometer and Adam's Forward Bend Test. Spine. 1998 , vol.23, p. 796- 802
  • (5) Theofilos K.; John S.; Konstantinos N et al. Ten-year follow-up evaluation of a school screening program for scoliosis. Is the forward-bending test an accurate diagnostic criterion for the screening of scoliosis? 1999, vol. 24 (22), p. 2318- 2324